活動のまとめとして、これまでの経験を通じて感じたこと、考えたことを語り合う座談会をおこないました。

7人ずつ、2グループに分かれておこないました。
座談会Aグループ(司会:行木)
座談会Bグループ(司会:1年生 Y.H.)

座談会Aグループ(司会:行木)

A1.音楽祭に参加して

行木:それでは座談会のAグループを始めます。
まずは、10月に宇治川音楽祭に参加した時に感じたこと考えたこと、そこから話していきましょう。

Y.O.:無観客開催になったことで、ぼくらの当日の仕事(会場整理)は……まあ、ほとんどなかったんですけど(笑)、出演している人や司会の人が地域を盛り上げようと頑張っているのは、現場にいて肌で感じました。

K.T.:ぼくも、商店街の人たちがたくさん現場に出ていて、本当にこれは商店街全体でやっている、がんばっているイベントなんだなあということを実感しました。

H.T.:運営する人たちが団結しているところがよくみえました。地域活性化のイベントっていうのは、実際は専門の会社に任せてしまうことが多いと書いてあったのに(注:授業で読んだ『地方創生のリアル』)、宇治川音楽祭は本当に地元の人たちだけで考えてやっているんだなと思いました。

K.I.:音楽祭やから、もちろん音楽がメインのお祭りなんだけど、それだけでなく戦隊ヒーローショーのようなものもあって、いろんな年代層で楽しめるよう工夫しているんだなと思いました。

T.S.:僕もK.I.君と同じです。音楽祭という名前だけど、実際には芸人さんが出てきたり、いろんな客層を楽しませようとしているなと思いました。今回はコロナのせいで現場に観客が来られなくて、そこは残念でしたが……。

Y.S.:でも、おかげで会場整理の仕事がヒマになって(笑)、その分ライブを間近で見られました。素直に楽しかったです。
出演者も、商店街の音楽祭っていうことで想像していた老人向けの演歌の人とかではなく、ヒップホップとか若者向けの人たちも普通にたくさん出てきて、いい意味で予想外のところがありました。地域活性化って色々なやり方があるんだろうけど、音楽祭というのはいろいろな年齢層に柔軟に対応できる点で、うまい形なのかなと思いました。

A2.平井さんへのインタビュー

行木:音楽祭の後は、みんなで実行委員長の平井さんにインタビューしたわけですが、それはどうでした?

K.I.:音楽祭の当日はあまり考えずに楽しんだだけだったけど、平井さんへのインタビューで、あのイベントの裏側ではどういう人たちがどう働いて、どう頑張っていたのかよくわかりました。一つのイベントを実施するというのは、簡単なことじゃないんだなって。

K.T.:僕もK.I.君と同じで、当日見えていたのは一部分だけだったけど、実際にインタビューしてみて、裏ではどれだけのたくさんの仕事や工夫、調整を重ねていたのかがわかりました。
表から見ているだけの人は、「なんだ今年は食べ物屋がないのか」とか「立ち止まって見ちゃダメなのか」とか、簡単に文句を言うかもしれないけど、裏側では開催のためギリギリのところまでがんばっていたので、それを知ると絶対文句なんか言えない。たくさんの苦労を乗り越えて、ついに実行してしまうのは、本当にすごいパワーだと思いました。

T.S.:平井さんから、コロナ禍の今回は音楽祭の開催は中止するよう、いろいろな方面から圧力がかかっていたことを聞きました。同時に、それでも中止は避けたいという強い思いや、開催のための工夫や交渉に力を尽くしていたことも知りました。
音楽祭は平井さんたちの趣味の延長で始まったということですが、かといってそんなに軽いものではく、もっと熱いものだったというか。……それとも逆に、趣味ではじめたこと、好きで始めたことだからこそ、それこまでの情熱が燃やせるのかもしれないですが。

行木:なるほど。

T.S.:宇治川商店街にもし平井さんという人がいなかったら、ああいう音楽祭はやれてないかもしれないなあ、とも思いました。

H.T.:僕も同じで、自分の趣味から始まって、それがああいう大きなイベントにつながったというのは、すごいと思いました。自分のやりたいことを100%やれてる人っていう感じでうらやましい。もちろん苦労はすごくあるだろうけれど……。

行木:そうだね、趣味から始まって、それがどんどん大きくなっていって……。生きてるって実感があるだろうね、あの人の生き方は(笑)。はい、Y.O.君。

Y.O.:さっきも出たんですが、裏側の話を聞けたのは良かったです。たとえばギャラの話とか(笑)。いくらくらいなのかとか、それ以前にどうやってミュージシャンを集めてくるのかとか、聞かないと想像もつかないようなことばかりでした。

Y.S.:平井さんが、常に新しいことをやろうと考えているのが印象的でした。たとえば今年こういうジャンルの音楽が少なければ、翌年はそういうジャンルを増やすという……。「反省して改善する」ということを、本当に積み重ねている感じでした。毎年同じことをするのではなく、どんどん変えていく。新しいことを加えつつ、いまにつながっていると、それがすごいなと思いました。

行木:なるほど。僕らも「反省」とか「ふりかえり」とかよくやるけど、だいたいその場で終わってしまって、次回につながってないもんね(笑)。

A3.商店街が抱える課題

行木:さて、この授業のサブタイトルは「宇治川音楽祭を通じて学ぶ地域活性化の課題と展望」というわけですが、まず宇治川商店街が抱えている課題はどんなものでしょうか。では、H.T.くん。

H.T.:それは……お客さんが減って、商店街が廃れてきているということ?

行木:そうですね。インタビューで平井さんも、宇治川商店街では3割くらいの店が休業し、シャッターを降ろしていると言ってましたね。
ただ、お店が休業する理由には、お客さんの減少以外のものもあったよね。みんなで読んだ『地方創生のリアル』の中で「シャッター商店街は本当に困っているのか」という章があったでしょ。覚えてる人いる?

Y.S.:シャッターを降ろしている店は、経営難でつぶれたのではなく、店をあけなくても、年金とか子供の仕送りで十分暮らしていけるから閉めているだけだという……。

行木:そう。部外者はシャッター商店街をみると「こんなに店がつぶれている、廃れている」と思ってしまうけど、実際にはサラリーマンで言うところの定年退職をしただけの店も多いという話。

K.I.:平井さんへのインタビューの時に、シャッターを降ろしている店について聞いたのは僕ですが、確かにそんな感じでした。もう商売を引退した人が、店にシャッターを降ろして住居の代わりに使っている。住居だから、店舗部分を赤の他人に貸したくない。一応テナント募集とか出しているけど、あまり本気ではないと、そんな話でした。

行木:よく「空き店舗の活用」とかいうけど、当の店主は経済的に困っているわけではないから、部外者が想像するほど、真剣に空き店舗活用を望んでいるわけではないということですね。
まあしかし、事情は何であれ休業した店が増えれば……どうなるでしょう? T.S.くん。

T.S.:本当にお客さんが減ってしまう。お客さんにとっては不便だし、商店街全体の雰囲気も暗くなるし……。

行木:だよね。「お客さんが減るから休業する店が増える」だけでなく、「休業する店が増えるからお客さんが減る」という逆の流れも組み合わさって悪循環になっている。この悪循環が、商店街の衰退の実態なんでしょう。(下図)



行木:これは宇治川商店街に限らず、日本中ほぼすべての商店街が直面している課題でしょうね。
経済産業省が「商店街実態調査」というのを何年か前に出しています。この座談会を文字化した時にリンクを付けておきましょう。(座談会の後、令和3年度版が発表されました)

A4.商店街衰退の背景にあるもの

行木:この「お客さんが減る⇔休業する店が増える」という悪循環を止めるにはどうしたらいいでしょうか?
いや、対策をいきなり考えてもらう前に、背景をもっと深掘りしておくべきかな。なんでこの悪循環は止まらないんでしょうか? 何が背景にあるんでしょうか?
誰か考えつく人いる? ……いま目が合ったのでK.T.くん(笑)。

K.T.:そうですね……。お客さんが減ってるというより、地方の人口そのものがどんどん減っているから?

行木:あー、地方の人口が都市に流出してね。地域の人口が減っているから商店街のお客さんも減る。だから悪循環が止まらないと。

K.T.:いや、でも宇治川商店街の場合には、それは当てはまらないなとも思っていて……。マンションがどんどん建っていて、人口はむしろ増えているとおっしゃってたので。

行木:なるほど。そこは一般的な地方の商店街と神戸の真ん中にある宇治川商店街とで、ぜんぜん違う部分だよね。(下図)



行木:ではなんで宇治川商店街は、まわりにマンションが建って人口が増えているはずなのに、お客さんが増えていかないのかな? 誰か理由を思いつく? はい、K.I.くん。

K.I.:マンションに入ってきた人たちが、商店街に買い物に行かないから?

行木:まずはそういうことですね。じゃあマンションの人たちってどこで買い物をしてるんでしょう?

K.I.:仕事帰りに駅前のスーパーとか……週末にクルマで郊外の大型ショッピングモールに行くとか……?

行木:でしょうねえ、きちんと調べてはいないけれど……。でもそうだとしたら、マンションの人たちは、商店街が近くにあるのに、なんで遠くで買い物するんでしょう? あ、T.S.くん。

T.S.:商店街というのは……地元のお年寄りが行く場所っぽいから? 独特のルールがありそうというか。

全員:あー。(同意)

行木:それ、確かにありますね。僕は垂水に引っ越してきたんですが、垂水商店街というのがあるのに、これまで買い物はずっとイオンで済ませてました。T.S.くんがいうように、商店街は老人が行く場所、昔からの住民が行く場所、みたいな感覚があって、なんとなく行きづらかったんです。

T.S.:はい。

行木:でも宇治川商店街にかかわるようになって、ちょっと商店街にも行ってみるか、と思ったらこれがすごく良い! 野菜も魚もイオンよりずっと安いし、あとペイペイが使えるからイオンより便利だった。
今はもう、商店街で買えるものはできるだけ商店街で買って、売ってないヨーグルトや豆乳だけイオンで買うような生活になりました(笑)。なんで今まで商店街に行かなかったのかと。
唯一不便なのは、お店が散らばってるし、買い物カートもないから、重い荷物を持ってあちこち歩かなきゃいけないことかな。イオンの方が買い物が楽だってことで、老人はむしろイオンの方に集結している感じすらある。イオン店内のベンチ、ぜんぶ老人が座ってる(笑)。

T.S.:僕の近所のスーパーもそんな感じです(笑)。

行木:すみません。話を宇治川に戻します(笑)。 商店街の衰退、つまり「お客さんが減る⇔休業する店が増える」という悪循環の背景に、地方の場合には地域全体の人口減少がある。これに対して宇治川商店街の方の背景にあるのは……Y.S.くん?

Y.S.:マンションが建ち、人口は増えているけれど、新しく引っ越してきたマンションの住民たちが、地元の商店街に来てくれないというか、関心がないというか……。

行木:うん。同じ町に住んでいるのに、同じ世界には暮らしてない。人が分断されてしまっている感じね。交流が希薄。だからせっかく人口が増えても、それが商店街の衰退を止めることにつながらない。

A5.課題解決としての音楽祭

Y.S.:平井さんもインタビューの中で、音楽祭をする目的に、古い町と新しいマンションの住民をつなぐ意味があるって、何度もおっしゃってました。

行木:あ、ぼくが言いたかった結論を先に言われてしまった(笑)。そうそう、平井さんたちの音楽祭の目的はそういうことなんだろうね。商店街の衰退という課題は同じでも、その背景にあるものが、宇治川商店街と地方の商店街とでは全然違っている。だから課題を解決する対策も全然違うものになる。 (下図)



行木:地方の商店街は、衰退の背景に地域全体の人口減少がある。対策としては、地域内にはもう人がいないのだから地域の外、都市から人を呼び込むしかない。外から人を呼んでお金を使ってもらうというのは、つまり何でしょう? K.T.君。

K.T.:観光ですか?

行木:そう。地元の特産品を使った加工食品の開発とか、ご当地グルメイベントの開催とか……。でも、ある地域を持続的に観光客が来る「観光地」に作り変えるには相当な投資が必要なんで、元から観光地だったところ以外で、観光で地域活性化がうまく行ったという例は、実はあんまりないともいうけど。

K.T.:『地方創生のリアル』の中にも、確かそんな話がありました。

行木:これに対して宇治川商店街は、衰退の悪循環を作っている背景が、新しく増えたマンションの人たちと昔からの町の人たちの分断。交流の薄さ。だから効果的な対策になるのが、はい、Y.S.君、ここでもう一度。

Y.S.:音楽祭です(笑)。

行木:ありがとう(笑)。宇治川音楽祭は、たとえば出演するミュージシャンの顔ぶれを見ただけでも、音楽が好きな人なら「お!?」って思うような内容になってる。こういうとんがった音楽祭、商店街らしからぬ音楽祭を開催することは、マンションの住民たちにこの地域への興味や関心を持ってもらう上で、一番ストレートな手段になると思います。
全国のほとんどの商店街が「観光開発で地域外から人を呼ぶ」という勝ち目の薄い対策に頼るしかないのに対して、宇治川商店街は、今後も増加していくマンション住人に商店街への関心を持ってさえもらえれば、売り上げも回復し衰退の悪循環を断ち切れるかもしれない。なんかすごく太い勝ち筋がある。実は(笑)。

Y.S.:宇治川商店街の未来は明るいんですね(笑)。

A6.音楽祭のアピールの難しさ

行木:でも、こういう活性化策は、理解してもらうのが大変だろうね。地域活性化っていうと、外部から人を呼び寄せて、地域にお金を落としてもらって……という古典的な観光開発が、やっぱり世間一般のイメージだから。
宇治川音楽祭みたいな地域内交流の活性化が目的の企画を、補助金の申請のために役所とかに持っていっても、なかなか理解してもらえなさそう。「市外や県外からどれだけ人を呼べるの?」みたいにいわれて。

K.T.:でも、宇治川商店街の衰退を止めるのに必要なのは、遠くから人を呼ぶことではなく、地域内の、マンション住民との交流を活発にすることなんですよね。交流のきっかけになる音楽祭は、普通に効果的だし、現実味もある対策だと思うんですが。

行木:だよね。まあ、マンションの住民が商店街に来るようになれば売り上げも上がるから、それを行政側に「期待される成果」としてアピールしていく他ないんだろうけど……。うーん、でもやっぱり、平井さんたちがマンション住民たちとの交流を活性化したいと思うのは、お金儲けのチャンスだからじゃなくて、もっと単純に「ひとつの町に暮らしているんだから、もっと交流して、ひとつの町の住民になってほしい」というところじゃないかなあ。
みんな、平井さんの人物像、わかるでしょ? そういう、金儲けとは違うことを全力で考えてそうだよね(笑)。

H.T.:インタビューの時、音楽祭の経済効果について聞いたのですが、平井さんが答えにくそうにしてました。

行木:あー、覚えてる。経済効果というのは、音楽祭を何年も続けるうちに現れてくる様々な変化、その中の一つなんだから、パッとは具体的には答えにくいよね。
その答えにくいことを平井さんたちは、行政相手でも、商店街の中でも、音楽祭について常に問われているんだろうなあ。音楽祭で当日どれだけ客が呼べるのか、お金を落してもらえるのかって。
でも、当日お金を落してもらうことを主目的に音楽祭を実施してしまったら、それはマンションの住民を同じ街の住民としてではなく、外から来る観光客として取り扱うようなもので、分断を解消するどころが逆に際立たせてしまう……。

K.I.:こういう種類の違う地域活性化に、何かそれぞれ呼び名はないんですか? あれば説明が簡単になると思うんですが。

行木:あー、人口減少が背景にある「外から人を呼んでお金を使ってもらう」タイプの活性化と、宇治川商店街のように、人口は増えているけど新旧の住民の間が分断していて活性化につながってない、だから「内部での交流の機会を作る」タイプの活性化とで、ってことですね。
うーん……うーん……。ごめん、勉強不足で知らないです(笑)。「地方型の課題」に対する「観光型の活性化」と、「都市型の課題」に対する「交流型の活性化」とでもいったらいいのかな。わかんない。
でも確かに、そういう専門用語が確立してれば、宇治川音楽祭みたいな都市型・交流型の活性化に取り組む人たちは、行政への説明が楽になるよね。

K.I.:そうです。

行木:それに、いま思いついたけど、さっき言った商店街衰退の悪循環は、地方型の方だと「お客さんが減る」をきっかけに始まるけど、都市型の方だと「休業する店が増える」をきっかけに始まるのかもしれない。駅に近くてマンション用地に最適ということで土地の評価額が高くなって、相続税が高くなって、親から店を引き継げないという。
いや、法律的なことはよく知らないけど、そんな事情もあるのかなあ。今度平井さんに聞いてみよう。

T.S.:あ、いいですか? 神戸市って、大阪のベッドタウンになっていってるっていうじゃないですか。

行木:うん。昔みたいな独自の文化をもった商業・産業都市ではなくなって、大阪のベッドタウン、ただの住宅地に変わっていってるよね。残念だけど。

T.S.:だとしたら、宇治川商店街で起きていることは、今後神戸のあちこちで起きるんじゃないですか?

行木:あー、古くからの商業地が住宅地に変わっていって、人口は増えるんだけど、旧来の商業地は増えた人口と交流がなくて、衰退が止まるチャンスを逃し続けるという。そうだね。まったくその通りだね。
だから宇治川音楽祭のようなタイプの、地域内交流を作るタイプの活性化が、神戸市ではこれからすごく重要になるよね。経済的にも重要だし、なんだろう、9月のリフレクション・デイの時に学長が「ウェル・ビーイング」って何度も言ってたじゃない? 一瞬のハッピーじゃなくて「持続的な幸福」みたいな意味だけど、そういうのを地域に作り出すって意味でも重要になるよね。
これ、神戸市に言いに行きたいね! みんなで市役所の前で看板持ってデモしようか(笑)。

A7.音楽祭の展望

行木:さて「宇治川音楽祭を通じて学ぶ地域活性化の課題と展望」の「展望」の方なんだけど、僕らの方から宇治川商店街に対して、こうしたらいいとか、僕らこういうことできますとか、何か提言できることってあるかな? K.I.くん、どう?

K.I.:そうですね、マンションの人たちとの交流を活性化するのだから、まずは知ってもらうためにイベントを……というのは、すでに平井さんが音楽祭をやってますよね(笑)。だからいまの音楽祭の中に、さらに付け加えたらいいことを提言するとしたら……。

Y.O.:もっと小さい子供向けのステージを増やす。いや、高齢者向けのステージを増やす? どっちだろう?

Y.S.:あとは商店街自体も、若い人が行きやすいお店をもっと出すとか……?

Y.O.:いや、マンションに入ってきた人がどんな年齢層の人たちなのかわからないと、何も言えなくない?

行木:そりゃもっともですね(笑)。あの辺ってどうなんだろう? 何部屋もありそうな大きめのマンションをみかけるから、子供がいるファミリー層が多いのかなあ。でも、目につかないだけで1LDKの小さいマンションもたくさんあったような気もする。そうすると単身者が住んでいるのか。いや、あんな好立地だと値段も高そうだから、子育てを終えた老夫婦が郊外の家を引き払って住んでいるような気もする。えーと……、わかんないですね(笑)。

Y.S.:そこ、ちゃんと調べないとダメです(笑)。

行木:すみません(笑)。来年度のサービスラーニングではアンケートを取るなりして、周辺のマンションの人たちのことをもっと調べるというのを入れましょう。その上で何か提言できることはないか、考えると。
でも今は、まあ仮に子供のいるファミリー層が多いと仮定して、そうしたらどんな提言ができますかね。T.S.くん。

T.S.:そうですね、今の小学生とか幼稚園児だったらやはり『鬼滅の刃』が流行ってるんで、たとえば『鬼滅の刃』のコスプレやってる人に宇治川音楽祭に来てもらうとか。本物の炭治郎や禰豆子が来るって知ったら、子供は絶対音楽祭行きたいっていうと思いますよ。そうしたらお母さん、お父さんも一緒に音楽祭に巻き込める。

行木:なるほど。それは巻き込めるね。「地域活性化の呼吸、壱ノ型・レイヤー見参」ってとこですね(笑)。
それと、僕は以前2年生のゼミで、花隈っていう、宇治川商店街よりもう少し大学に近いエリアの活性化を手伝ってたんだけど、その時も若い家族層を花隈の地域イベントに呼びたいってことで、子供向けにクリスマスの飾り物を作ったり、ちょうちんをつくったりするワークショップのブースを出しました。あれは子供とお母さんがたくさん来ましたよ。

T.S.:なるほど。「弐ノ型・親子で工作」ですね(笑)

行木:では逆に、マンションの住民を調べてみたら老夫婦が多いとわかった。そうしたらどんな提言ができるかな。H.T.君。

H.T.:クラシックのコンサートとか? こんな神戸の真ん中の新築マンションに引っ越してこられるということは、お金持ってる人たちかもしれない。クラシックを聞く層と重なりそうです。

行木:なるほど。あ、K.T.君。

K.T.:マンションの住民との交流が目的なら、音楽祭のようなイベントに呼ぶ工夫だけでなく、その後、普段も毎日商店街に来てもらえるような工夫がいると思うんです。
たとえば、ファミリー層が多いのであれば商店街に託児所があるとか、犬を飼っている人が多いのであれば、犬と一緒に買い物に来られるとか……。

行木:あ、それは全くその通りですね。特に犬の散歩も兼ねて買い物できる商店街なんて、マンション住民に需要が大きいだけでなく、スーパーとの差異化という意味でもすごくいいですね。ただ、店先でうんちやおしっこされると困るのでそこをどうするかですが……。どうするの?

K.T.:そこは……イヌ側の努力と反省に期待します(笑)。

A8.おわりに

行木:最後に、今回の宇治川音楽祭に参加したり、平井さんにインタビューさせてもらったりして、ここが一番印象に残ったとか、何か考えるきっかけになったということがあれば、ひとりひとり話してほしいのですが……。じゃあ順番に、Y.O.くんから。

Y.O.:ひとつのイベントを開くために、たくさんの人たちが動いていたのを知って……。コロナのこともあって、開催できるかできんか、ギリギリまで悩んだ上で、それでも知恵を絞ってやっていて……。そこが一番印象に残りました。

Y.S.:僕は、さっきインタビューの感想のところでも言ったんですが、この音楽祭が、次はこうしよう、次はこうしようって、反省と改良を重ねながら続けられていることを知って、そういう変化していくことの大事さというのを学んだ気がします。

K.T.:僕は音楽祭のポスターとかチラシの絵が印象に残りました(笑)。みんなのいう「印象に残る」とはちがって、インパクトが強かったって意味なんですが。

行木:平井さんへのインタビューでもポスターのこと聞いてたよね(笑)。

K.T.:はい。そうしたら、あれも知り合いが描いているって言っててびっくりしました。いろんな才能が集まって音楽祭をやってるんだなあって。

H.T.:僕は、さっき音楽祭の感想のところで言ってしまったんですが、音楽祭の開催にたくさんの町の人がかかわっていて、本当に町のイベントなんだなあって思って、そこが一番印象的でした。

T.S.:僕が思ったのは、みんな真剣で熱いってことですね。ひとつの目標を共有していて、それは今回みたいにコロナで壁にぶつかることもあるかもしれないけど、乗り越えてくぞっていう熱い気持ちを、すごく感じました。

K.I.:僕は、たくさんの街の人がこのイベントで動いているのを見て、この人たちは本当にこの街が好きなんだなあという愛情を感じました。街に対して、というか、そこで一緒に住んでいる互い互いに対する愛情かな。その流れで、新しくマンションに入ってきた人たちも放っておけない、同じ街に住んでるんだからってことで呼び掛けるような音楽祭をやっているのかなと。

行木:本当に宇治川商店街は一致団結してるよね。その状態だけでもすでに地域活性化を成し遂げちゃってるんじゃないの、と思ったりもするんだけどね。
さて、予定は15分といいながら、もう35分も話していますね(笑)。Aグループの座談会はここら辺で終わりにしましょうか。みなさんお疲れさまでした。

全員:お疲れさまでした。

座談会Bグループ(司会:1年生 Y.H.)

B1.音楽祭に参加して

Y.H.:今からBグループの座談会を始めます。気楽にやって行きたいと思います(笑)。

全員:はい(笑)。

Y.H.:ではまず、10月に宇治川音楽祭に参加してみてどういう風に思ったか。
僕から言いますが、小規模な商店街のお祭りかなと思っていたら、かなりたくさんのスタッフが動いていたりとか、いろんな出演者がいたりして……。もちろん今回はコロナのために縮小してやっていたわけなんだけど、それでもあれだけの音楽祭をやっていて、すごいなと思いました。来年、音楽祭があるんだったら、はじまりから夜遅くまで楽しみたいなと思います。
じゃあ、次、Sh.Y.さんお願いします。

Sh.Y.:最初は僕もY.H..君と同じで、小規模な商店街のお祭りかなと思っていたら、行ってみるといろんなアーティストが出てて、「めっちゃちゃんとしてるフェスやん」って驚きました。

Y.H.:次、R.H.さんお願いします。

R.H.:今回はコロナのために観客を会場に入れられなくなってしまったけど、それでも中止はしないで、オンライン開催という形で何とか開催して、そこは本当にすごいなと思いました。

Y.H.:次、M.Y.さんお願いします。

M.Y.:どんな出演者が出るのかって思ってたら、かなりいろんなジャンルの人たちが出てて、そのごちゃまぜ感が面白かったです。

Y.H.:次お願いします。

T.N.:行く前は小さなお祭りやと思ってたんですけど、機材とか舞台とかすごく本格的で、手がかかっているなあと思いました。

Y.H.:はい。次お願いします。

T.M.:僕が思ったのは、コミュニケーションとかが円滑に進んでて、とても空気が良いなってことです。スタッフが意思疎通をはかる時も、軽いノリで、でもしっかりと意思疎通ができているなあって思って、だからこうやって大きく盛り上げられるし、いいお祭りにしようっていう一体感が生まれてるのかなって思いました。

Y.H.:ありがとうございました。じゃあ最後にSo.Y.さんお願いします。

So.Y.:はい。率直に楽しかったなあって思いました。商店街のイベントって若い人向けではないっていうイメージがあったんですけど、自分たちみたいな世代のものでも楽しめるイベントで……。すごくよかったです。

B2.平井さんへのインタビュー

Y.H.:じゃあ次の話題です。平井さんへのインタビューを我々おこなったわけですが、それを通じて感じたこと、考えたことをお願いします。
最初は私から言いますが、えー……音楽祭は商店街の様々な人たちが協力しあってやってるというのは、ボランティアで行った時になんとなくわかったんですが、実際にどういうふうに協力しあってあの祭りを成功させたのか、そこを知りたいなと思っていて。それが、平井さんへのインタビューの中で、神戸市からのお金をもらってきたりとか、いろんなミュージシャンに募集をかけたりとか、はじまりはバーでの雑談だったとか、いろいろと分かりました。とにかくひとりひとりが役割を持ってそれぞれ動かないと、祭りを成功させることも、はじめることすらもできなかったということがよくわかりましたね。
じゃあ、次、Sh.Y.さんお願いします。

Sh.Y.:インタビューを通じて思ったのは、平井さんが自分の好きなこと、やりたいことを貫いて、それでここまで大きなイベントになったってことが、まずすごいなと思いました。好きなことだから、このコロナ禍っていう環境の中で、いろいろ大変な対応も乗り越えて、今回も実現することができたのかなって思いました。

Y.H.:次、R.H.さんお願いします。

R.H.:コロナ禍でも平井さんは、神戸市との調整とか出演者との調整とか、いろいろやって、なんとか開催させて……すごいなと思いました。えーと……以上です(笑)。

Y.H.:はい。M.Y.さんお願いします。

M.Y.:平井さんの話を聞いて、今回の無観客での開催の前には、開催できるかどうか、いろいろな人との話し合いがあったことを知りました。でもなんとか開催することができて、出演者の方々も開催してくれてありがとうっていう事を言ってたので、本当にすごいことをやっていたんだなあと思いました。

Y.H.:じゃあT.N.さんお願いします。

T.N.:平井さんにインタビューをして、すべての世代の人が楽しめるような音楽祭にしようとしていることがわかりました。

Y.H.:はい。T.M.さん、お願いします。

T.M.:平井さんにインタビューをしてみると、開催までには結構ごたごたがあったりしても、最終的にはうまくまとめあげて開催にこぎつけられたってことがわかりました。それに、今後の目標とかも大きく設定されていて、そういうところが年々音楽祭が盛り上がっていっている理由なんだろうなって感じる内容でした。

Y.H.:はい。So.Y.さんお願いします。

So.Y.:はい。地域活性化ということで、平井さんがすごく本気で商店街について考えているんだなあっていうのが伝わるインタビューだったなって思います。それと、自分が一番質問したかったのは、平井さんはすごくコミュケーションお上手で、そこを聞けて……自分の今後の糧になるようなことを聞けたので、そこはすごく良かったなあっていうふうに思います。

Y.H.:人生の師匠として(笑)。

So.Y.:そうです(笑)。

B3.宇治川商店街の課題と展望

Y.H.:さて僕達は、この第15回までサービスラーニングとして、地域活性化の現場や、そこで活動する人たちを実際に見てきたわけなんですけども、そこで宇治川商店街の人たちがどうにかしようとしている課題っていうのは何なのか、みんなの考えを教えていただきたい。

T.M.:それじゃ、いいですか?

Y.H.:はい。

T.M.:宇治川商店街の人たちがどうにかしたいと考えてる課題ってことですが、平井さんがインタビューの中で、マンションが建って新しくやってきた住民との折り合いが大事っていうことを、何度も話されてました。たぶん一番にある課題は、新しい住人と元々いた住民の関係性とかコミュニケーションじゃないかなと。それがうまくいくかが、地域のイベントを盛り上げる上でいちばん壁になっているのかなって印象がありました。たぶん、そこを解決することができたらもっと盛り上がれるんじゃないか、それを当事者の平井さんも話されていました。だから宇治川商店街の地域活性化で一番課題になるのは、やはり新しく来た住人と元々いた住民の関係性、そこかなって思いました。

Y.H.:ありがとうございます。

So.Y.:あの、いまの意見に付随していると思うんですけど、マンションに入ってきた人、外から来た人は、当たり前ですけどその地域のことをよく知らなくて、でもやっぱり生活しなきゃいけない、買い物に行かなきゃいけないので、たとえば「お肉屋さんどこかいいところあるかな」とかっていう時に、最初に調べるのは商店街じゃなくて、「近くのスーパーはどこかな」っていう風になるので、そこを「近くのスーパーどこかな」じゃなくて、「近くの商店街どこかな、肉屋さんどこかな」っていう風に向けられたら、地域活性化、商店街の活性化になるんじゃないかなって思います。

Y.H.:ありがとうございます。M.Y.さんどうですか?

M.Y.:地域活性化するためには、年に一回の音楽祭だけじゃなくて年に何回か、いろんな年代の人達が楽しめるようなイベントを開けたら人が集まるんじゃないかなと思いました。

Y.H.:ありがとうございます。じゃあT.N.さん、何かありますか?

T.N.:商店街自体がその高齢化してきて、閉まっている店も増えていてるので、そこをどうにか解決できたら、もっと活性化できると思います。

Y.H.:ありがとうございます。じゃあSh.Y.さん、次お願いできますか?

Sh.Y.:うーん……。いや、もう思いつかないなあ。

Y.H.:じゃあ、さっきSo.Y.さんが、この地域のマンションに引っ越ししてきた人が「お肉屋さんどこかな」ってなった時、スーパーじゃなく商店街を探すようにすれば活性化できるって言ったけど、そうなるためにはどうしたらいいだろう? 新しい住民に、もっと商店街の方に関心が向かうようにするには、商店街は何をしたらいいんだろう?

Sh.Y.:うーん、スーパーに負けないためには……。うーん、難しい(笑)。

Y.H.:これ、Sh.Y.さんから素晴らしい意見が出たってことにして、後で文字にする時にSh.Y.さんに何か書き加えてもらいましょう(笑)。
じゃあ、R.H.さん。お願いできますか。

R.H.:そもそも自分は、宇治川商店街とか宇治川音楽祭とか存在を知らなかったので、県外の人とか、もともと知らない人とかにもアピールできるように、宇治川商店街にしかないものっていうのをどんどんアピールしていけば、活性化に繋がるんじゃないかなと思います。それが何かは、まだ分からないですけど。

Y.H.:ありがとうございます。
最後に僕の意見です。ここまでみなさんの意見の多くは「マンションに住む新しい住民たちは商店街のことを知らない。だから買い物をしようと思った時に商店街に来ない。もっと商店街のことを知ってもらおう」というものだったと思うんですが、僕の意見はみなさんとはそれとは違ってて、「知っていても商店街には来ないんじゃないか」というものです。
宇治川商店街が、というより、全国の商店街に一般にいえることですが、たとえばシャッターが降りてる店が多かったりすると雰囲気が暗くなるし、そのシャッターにスプレーで落書きなんてしてあると「治安が悪そう」ってどうしても思ってしまいます。本当は治安は悪くないのかもしれないけど、悪そうって思われた時点で、商店街に行く選択肢はなくなる。きれいで明るいスーパーに行こうってことになる。
宇治川商店街だって、音楽祭の時に酔っ払って道で寝ているおじさんがいて、それは商店街の人にとっては「ああ、〇〇のおっちゃんだ、いつもしょうがないなあ」なんて笑い話で済むし、またそういうところが商店街の温かみというか味になっているんだろうけど、マンションの人はそれを見て、ただただ「怖い」としか思わない。小さい子供を連れた若いお母さんなんか、たぶん絶対に行かない。
楽しいイベントをいくらやっても、お得なサービスをいくらやっても、SNSを使った宣伝をいくらやっても、ぱっと見の印象というものが全部を意味ないものにしてしまう。商店街の活性化というと、どんなイベントをするか、どんなサービスをするか、どんな宣伝をするかってことばかりだけど、僕は見た目の印象の改善というものが、まずはいちばん大きな課題だと思っています。

全員:うーん。

Y.H.:なんか皆さんの意見とぶつかることを言ってしまってすみません(笑)。 話がまだまとまってないというか、僕がまとまらなくしてしまったんですが(笑)、時間なのでこれにて座談会を終了したいと思います。みなさんお疲れ様でした。

全員:お疲れさまでした。