宇治川音楽祭という地域活性化イベントを経験した上で、今度は他の地域の活性化の事例を文献で調べていきました。

宇治川商店街で見聞きした状況を他地域との比較で整理し、この後に予定されている商店街の方へのインタビューで何をたずねるか、質問項目作りのヒントにすることが目的です。

研究の方法

文献研究に使ったのは、木下斉(きのした ひとし)さんの『地方創生のリアル』というコラム集です。書籍にもなっていますが、ここではウェブ上の連載記事を使いました。

著者は大学生の頃から地域活性化の現場で活動している人で、現場からの生々しい現状報告や問題提起が満載のコラム集です。

関心のある記事をひとり一本ずつ選び、内容をレジメにまとめ、発表していきました。

他地域との共通点

このコラム集の多くの記事で強調されていたのが補助金をめぐる問題です。

日本政府は地域の活性化を最重要政策の一つとして大きな予算を充てていますが、補助金申請の審査には他地域で成功した事例が通りやすいということで、それが似たようなゆるキャラやB級グルメのイベントを全国にあふれさせる原因にもなっています。使い道も1年もしくは数年で完結することが前提なので、単発的なイベントや、あるいは大型の予算が下りても建築物を建てることにしか使えず、継続的な維持費や人件費には使えません。そのことが、いくら地域に予算を投入しても、継続的にお金を生み出す仕組みの構築につながらない原因になっています。

こうした補助金の問題はとうぜん宇治川商店街でも共通していると思いますが、具体的にはどうなっているのでしょうか? この後で予定している音楽祭の関係者へのインタビューで確認したい点です。

また、活性化という新しい事業を旧来の地元組織で実施することの非能率性や、意識の違う世代の分裂が事業の足を引っ張るという問題、一部のやる気のある人だけに過重な仕事が降りかかるという問題、これらもやはり宇治川商店街でも共通していそうですが、そのあたりは実際どうなのでしょうか。インタビューで確認したいところです。

宇治川商店街の独自性

活性化をめぐる他地域の状況を知ることで、共通性と同時に、宇治川商店街にしかみられない独自性もみえてきました。

たとえば他の地域だと、補助金の申請を、そのための企画作りからイベント業者の手配までひっくるめて請け負うコンサルタント会社が活躍していますが、宇治川音楽祭の場合、商店街の人たちの人脈と手作業ですべてが動いている印象です。

コンサルタント会社は補助金の獲得に必要不可欠な存在ですが、一方で著者の木下氏は、地域が過度にコンサルタント会社に依存することの危険性を様々に指摘しています。たとえば都会にあるコンサルタント会社が、依頼先の地域の特徴や現状をよく把握しないまま他地域での成功事例を当てはめていくことで、先に述べた全国同じような活性化策の氾濫を招いたり、補助金が終わりコンサルタント会社が撤退すると、地域には活性化のノウハウも人材も残っていなかったり……。

こうした全国的な状況を打開するヒントが、「自分たちですべてやる」という宇治川音楽祭にはみつかるかもしれません。


このような他の地域との比較研究で浮かびあがった疑問や、ボランティアの時に発見した疑問などをみんなで挙げていき、音楽祭の関係者へのインタビュー項目としてまとめていきました。


▶ 03. 音楽祭実行委員長にインタビュー