ポテト論争 和解へのプロセス

2年生 Y.H、N.M

●ポテト論争とは

 世界には、そのおいしさゆえに人それぞれの食べ方のこだわりを生み出し、結果、人々をふたつの派閥に分けてしまうような悪魔的な食べ物がある。

 第1号でSさんが調査した「たい焼き」がそうだった。


 同じようにマクドのポテトをめぐっても、決して相容れることのない二つの派閥がある。

 ポテトを頼むと、同じ入れ物に入っていても、カリっとしたクリスピーなポテトと、しなっとした柔らかいポテトとが混ざっている。

 そのどちらがうまいのか

 この問いの前に人類は「カリカリ派」と「しなしな派」に分断され、不毛な争いを繰り返してきたのである。


いや、そこはカリカリしかありえんやろ

【カリカリ派の主張】

第1に揚げたて感がある。第2に食感がいい。そもそも油で揚げるっていうのは、アツアツでカリカリの食感をつくるためやん。しなしなになったら意味ない。

第3に、揚げものの油っこさも、カリカリになるまで揚げてしまえば消える。多分やけど、カリカリはカロリーとかもほぼないんちゃうかな?

第4に貴重。良いカリカリは全体の中のほんの一部しかない。これこそ味の宝探しや!

それにくらべるとしなしなは……?

ありえん。しなしなは基本的に油っこいし、たまに時間が経ちすぎて、むしろパサパサしているときがある。
それにしなしなの場合、味がよくしみこむ。

味がしみこむのは良いことでは……?

ちゃうねん。塩がかかっている場合、塩がしみこんで塩の味しかしない。塩水飲んでるみたいなもの。
しなしなを喜ぶやつは前世がいそぎんちゃくか何かだったんちゃう?

ちょっと待ってくれるか。

【しなしな派の主張】

塩の味しかしないって、それはカリカリばっかり食べてるからやろ。
カリカリになるまで揚げてしまったらイモの味なんか消えてしまう。イモ分が消えたら塩分しか残らん。それはしょっぱいよ。

イモをきちんと感じられるのは、ほどよく熱が通ったしなしなだけ。
イモ感のあるしなしなポテトなら塩に負けないし、塩以外のいろんなソースにもよく合う。

あとカリカリは、時間が経った時のしっけ加減が嫌。しっけたせんべいみたいでまずい。

それってしなしなになったってことでは?

ぜんぜんちゃう。しなしなのポテトは、たとえるなら濡れおかきや。最初っからやわらかに作られている濡れおかきは、しっけたせんべいとは根本的に違うやん?

それにポテトを買うと8割はしなしなや。遭遇率高めでお腹も満足だし、入ってる割合から考えてもしなしなの方が標準形やろ。ポテト=しなしな。これはマクドさんの結論でもあるんや。

正味な話、カリカリは揚げすぎた失敗作が混ざってるだけちゃうん? 
本来捨てる部分を喜んでパクパク食べてるとか、カリカリ派は前世がいそぎんちゃくか何かやろ?

なんやと!

なんやとはなんや!!

なんやとはなんやとはなんや!!!

 こういう不毛な争いが、俗に言う「ポテト論争」である。


●和解へのプロセス

 カリカリ派にもしなしな派にもそれぞれ言い分があり、正義がある。正義と正義をぶつければ、そこに起きるのは戦争しかない。戦争は悪ではなく正義が引き起こすのだ。

 理性ある近代的人間として、私たちは和解のプロセスを模索することを選んだ。

 カリカリのポテトを少しずつしなしなにしていきながら、ふたりで試食。お互いに「この硬さなら許せる、受け入れられる」という妥協点を探していくのである。


実験方法

 100均で電子レンジ用の蒸し器を買って来た。


 ここにカリカリのポテトを入れ、蒸して柔らかくしていく。


 10秒ごとにレンジから取り出してふたりで試食。何分何十秒でカリカリ派でもしなしな派でも受け入れられる硬さのポテトになるのかを突き止めようという実験である。


 加熱中なのに10秒でむりやり開ける操作を繰り返したら、レンジが壊れてしまいそうだ。壊してもよい電子レンジがある場所ということで、実験には先生の研究室を使うことにした。


 私ら「トントン」

 先生「いらっしゃい。電子レンジはこれ。壊さないように注意して使ってね。」

 私ら「りょ。」


 だがここで思わぬ事態が!


 朝、通学途中に買ったポテトが、昼休みのいま取り出してみたら、全てしなしな(というかぶよぶよ)になっていたのである。

しなしなばっかりやん。どうしよ、実験できひん。

落ち着くんや。お皿に乗せて、ラップをかけずにチンすれば、水分飛んでカリカリに戻るやろ。知らんけど。

なるほど。てか、それやったら実験自体を逆にしたらいいんちゃう? しなしなポテトを少しずつカリカリにしていきながら、お互い許せる硬さを探ってく。結果、同じことやん。

うちら天才ちゃうか。

 こうして実験は開始された。


●しなしなポテト加熱実験

まず10秒温めよう。

塩は絶対いる爆笑

(もぐもぐ)
……硬くはなったけど、カリカリではないな?

ほんまや。しなしな感は減ったけど、でもこれカリカリというより……カチカチ?

まだよくわからん。次、30秒しよう。

……変わらんな。

そうやな。20秒増やそう。

さっきより硬くなった! 急に来た!

外側だけめっちゃ硬い。これ食べても大丈夫なの? 消化できる自信ないんやけど。

しなしな派として、どの硬さから許せなくなったか言わなあかんのだけど、硬い柔らかいの前に、味がまずすぎて判断できん。

ソレナ ( ‘;’ )
カリカリ派としても、許せる硬さになったら言わないかんのだけど、この方向で硬くなっていっても、自分の中の「カリカリ」の枠には永久に入ってこんわ。

でも、奇跡が起きることを願ってもう20秒増やそう

あれ、なんかしなしなしてる😲!? 全然おいしくないけど……。

えっ( ゚Д゚) ここに来てしなしなに戻ったんか?
もっとしよう。思い切って次1分で。

……間違いやった。しなしなには戻らん。しかしカリカリにもならん。カチカチになるだけ。おいしい概念はない。できたてしか勝たん❢

いくら温めても無理やわ。カリカリにするには揚げないと。

 現在の状況をまとめてみる:

 点Aと点Bの間にあるはずの「妥協点X」を探るべく、B「しなしな」を加熱してA「カリカリ」に近づけようとしたわけだが、たどりついたのはC「カチカチ」という、およそ食用には適さないシロモノであった。カリカリとしなしなは水分量だけでなく、油分とか火の通り具合とか、もっと複雑な要素の絡んだ差があるのかもしれない。

 いずれにせよこのままでは、カリカリ派としなしな派の妥協点は永遠に見つからない。


●実験その2:やっぱり蒸してみた

朝買ったポテトの中に、多少カリカリっぽさが残っているのもあるやろ。せっかく蒸し器あるんだから、それを蒸してみいひん?

そうやな。ダメ元でやるか。
比較のためにしなしなのポテトも一緒に蒸してみよう。まず1分。

カリカリ(写真左)めっちゃ硬くなった。けど、さっきと違って食べられる。

しなしな(写真右)も、わりと良き (・∀・)イイネ!!

じゃあ、しなしな派が1番おいしいと思ったところまで蒸していこう

では1分半で

ビックリした。「アホ」っていう字になって出てきたかと思った。

では行くで。まずはしなしなから。右の方やな。

んん!? このしなしな……、カリカリになってる!!

ほんまや! Σ(・□・;)
先生! 来た! しなしなポテトもカリカリになる時代が来た!

苦笑い(;´д`)
でも確かにカリカリになってる。なんで蒸したのに硬くなるんだろう?

蒸されすぎて縮まって硬くなったんやろか?

ちょっと! カリカリの方もおいしくなってるよ!?

ほんまや! 焦げぽてになる。ポテチやんこれ!

ポテロングっぽい。これ、元のカリカリよりおいしくなってない?

蒸し器がここまでできる子やったとは。残りぜんぶ蒸そう!

1分半な。

勝利の方程式、私ら解いてもうたな。答えは「1分半蒸す」や。

1分半蒸すと、しなしなはカリカリになって、カリカリはスナック菓子みたいなカリカリになる。
両方ともワンランク上がるんや✨

図にまとめるとこうかな。

自分でまとめといてアレやけど……しなしな負けたってこと?

そゆこと❕ (^_-)-☆

結論!
あっためても蒸しても結局カリカリになる。歩み寄って妥協できるポイントとかない。つまりしなしなは負ける

なんやと!?

なんやとはなんや!!

なんやとはなんやとはなんや!!!


指導教員のコメント

世界がどうして平和にならないのか、君たちをみていてよくわかりました。

あと、違和感がないので気が付かなかったかもしれませんが、ネットにあげる際、君たちの顔写真は似ている猫の写真で代用しました。このページこのページからお借りしました。

ところで、さいきん研究室の電子レンジの調子が悪いのですが、何か心当たりはありませんか?