あの店・あの曲 耳残りランキング
●はじめに
「ヒット曲」とは何だろうか?
配信の売り上げやストリーミングの再生回数などから割り出したヒットチャートは、週ごとに内容が大きく入れ替わっていく。10位以内に入っている曲でも知らないものは多いし、1位をとった曲でも、その後思い出されることもなく忘れ去られるものがほとんどである。
そういうのは「ヒット曲」と言っていいのだろうか? ヒット曲というのは、何年たっても人の心に残っている曲、タイトルを聞けば「ああ、あれね」と口ずさめる曲のことではないだろうか。商品として消費される前に社会に共有され、文化となった曲、そういうものを「ヒット曲」というのではないだろうか?
「ヒット曲」をそのように定義するなら、これまで音楽ランキングには登場することのなかった、しかし確実に我々の心に残る「ヒット曲」を大量供給しているジャンルがあることに気づく。
近所のスーパーでいつも流れているあの曲。ドラッグストアで繰り返しかかるあの曲。タイトルも知らないし、誰が歌っているかも知らない。けれど、確実にみんなが口ずさめるあの曲――。「店内ソング」とでも呼ぶべきジャンルである。
心に残る、というより、耳に残ってしょうがないという感じかもしれないが、しかし社会的に共有されてしまった一つの文化であることには間違いないだろう。
この記事は、これら「真の意味でのヒット曲」といえる店内ソングについて、学内で大規模アンケ―トを実施、街で一番耳に残る曲は何か、おそらく史上初となるランキングを作成したものである。
●調査の概要
うちのゼミの先生は「文化人類学」「地域文化論」「宗教と社会」「アジア文化論」など、履修者のやたら多い講義を担当している。神戸芸術工科大学でも授業をしているそうだ。これらの受講者を対象に「現代大学生の魔法にかんする意識調査」なるアンケートを先生がやりはじめたので、便乗して店内ソングについての質問も混ぜてもらった。
またこの質問の前に、居住地(出身地)をたずねる質問も入れてもらった。
よろしければ、あなたが住んでいる街を市区町村まで教えてください。下宿の人は実家の市区町村を教えてください。(記述式、複数回答可)
アンケートに使ったのはMicrosoftのFormsである。同一人物の重複チェックをする目的で学籍番号が自動記録される設定になっており、そのことはアンケートの最初に説明が出る。つまり記名式のアンケートに近いかたちとなる。
また、授業中に時間を取って回答したわけではなく、FormsのURLを指示し「家でやっといてね」といわれただけである。それでも回答してくれた学生は比較的まじめな層に偏っているかもしれない。
回収されたアンケートは同一人物の重複を除いて364人分あったそうである。ただし、店内ソングについての質問は後から追加したため、この質問が載ったアンケートに回答したのは約半数の176人。そのうち、この質問への回答が空欄だった人が55人、また質問を取り違えて曲ではなくスーパーの名前を書いた人(全て留学生)が7人いた。それらを除いた有効回答数は114人となる。
114人の居住地(下宿生の場合は実家)は以下の通り。3割が神戸市内に住み、7割が兵庫県内に住んでいる。
都道府県 | 人 | 市町村 | 人 | 区 | 人 |
---|---|---|---|---|---|
兵庫県 | 82 | 神戸市 | 33 | 兵庫区 | 6 |
北区 | 5 | ||||
西区 | 4 | ||||
長田区 | 4 | ||||
垂水区 | 3 | ||||
須磨区 | 2 | ||||
中央区、東灘区、灘区 | 各 1 | ||||
(未記入) | 6 | ||||
西宮市 | 11 | ||||
明石市 | 8 | ||||
姫路市 | 7 | ||||
加古川市 | 6 | ||||
尼崎市 | 4 | ||||
宝塚市 | 4 | ||||
伊丹市 | 3 | ||||
たつの市 | 2 | ||||
加西市、西脇市、川西市、淡路市 | 各 1 | ||||
大阪府 | 17 | 大阪市 | 9 | ||
吹田市 | 2 | ||||
茨木市 | 2 | ||||
豊中市、柏原市、泉大津市、泉北郡 | 各 1 | ||||
和歌山県 | 2 | 海南市、すさみ町 | 各 1 | ||
京都府 | 1 | 宇治市 | 1 | ||
岡山県 | 1 | 岡山市 | 1 | ||
広島県 | 1 | 福山市 | 1 | ||
山口県 | 1 | 光市 | 1 | ||
福岡県 | 1 | 福岡市 | 1 | ||
宮崎県 | 1 | 宮崎市 | 1 | ||
香川県 | 1 | 高松市 | 1 | ||
山梨県 | 1 | 甲州市 | 1 | ||
静岡県 | 1 | 御前崎市 | 1 | ||
長野県 | 1 | 安曇野市 | 1 | ||
中国(留学生) | 2 | ||||
(未記入) | 1 |
●ランキング発表!
前置きが長くなってしまったが、それでは行ってみよう。学生が選んだ、耳に残って残って残って離れてくれない店内ソング、まずは第10位!
第10位 ドン・キホーテの歌(2票)
耳に残ってしまうことで全国的に有名な曲だが、それでも10位止まりであった。すなわち耳残り強度において「♪ドンドンドン、ドンキ~」をゆうに超えるレベルの
※アンケートより
「ドンキのうた」(大阪市)、「ドンキホーテの歌」(神戸市)
同着 第10位 関西スーパーの歌(2票)
「素直な気持ち伝わるよ……」で一瞬ブレイク、からのサビ、「あんぜーン、あんしーン、手をつなごホォオオオ!」の血管の切れそうなシャウト、そしてやたら技巧的な長尺ギターソロと、おおよそスーパーの店内ソングとして不要なものばかりを詰め込んだ関スーの「ダンシング・エンジェル ~ テーブルに舞い降りた天使」が同着で第10位。てか曲名もムダにカッコいいな。音質の良い動画が見つからなかったのが実に残念である。
※アンケートより
「関西スーパーの歌」(大阪市)、「関西スーパー」(西宮市)
同着 第10位 スーパーマルハチ(2票)
同着 第10位 平和堂の歌(2票)
同着 第10位 松源の歌(2票)
前出の関西スーパーも含め、第10位には同着でローカルスーパーがかたまったので、まとめて紹介していきたい。

関西ローカルスーパー分布図
マルハチというのは、神戸市の西半分から明石にかけて分布するスーパーらしい。大阪北部の住民である私は行ったことがない。マルハチの曲というのもネット上には見つからなかった。マルハチ圏内の住民に聞くと、それはたぶん曲ではなくて、店内放送の前に流れる3秒くらいの「♪スーパーマルハチっ」というジングルのことをいっているのではないか、とのことだった。
※アンケートより
「スーパーマルハチ」(神戸市北区)、「スーパーマルハチ」(神戸市)
平和堂は滋賀県の固有種のスーパーだが、淀川水系にもその生息域を拡大している。「フレンドマート」という近縁種も混在しているが、どう違うのかは熟練のびわこ県民でないと見分けられないという。
※アンケートより
「平和堂(フレンドマート)」(尼崎市)、「平和堂のテーマソング。近隣のスーパーでテーマソングをかけている店舗は平和堂かかつてのジャスコしかない。」(茨木市、もと滋賀県民)
松源は岸和田、泉佐野、泉南、和歌山あたりに集中するスーパーである。ここも私は行ったことがないが、この店内ソングはすごい。ここだけ時が昭和で止まったかのような深い味わいがある。海外旅行を終えて関空に降り立った後、うっかり泉佐野の松源に入ったりしたら、旅の記憶がすべてこの曲で上書きされてしまいそうである。
※アンケートより
「松源」(大阪市)、「松源の歌」(和歌山県海南市)
同着 第10位 イオンのクリーンタイム(2票)
同着10位には、ローカルスーパーとは対極にある全国規模の巨大スーパー、イオンもランクインした。ただしみんなの印象に残っているのは「ただいまクリーンタイムのお時間です」という、客はどないせいっちゅうのかというアナウンスと、後ろで流れるジャズのスタンダードナンバー「イン・ザ・ムード」のようである。掃除の音楽ばかりが印象に残るというのも、スーパーとしてはどうなのだろう。
※アンケートより
「イオンのお掃除の曲」(川西市)、「イオンの掃除の時の音楽」(伊丹市)
同着 第10位 お肉のうた(2票)
「お肉のうた」というのが2票入っていたのだが、この曲で合ってるだろうか。店内ソングは正式名がわからないものばかりなので、集計も大変なのである。
この曲で正しいのだとすれば、正式名は「お肉スキスキ」。元モーニング娘。の石川梨華が、歌だけでなく作詞作曲も手がけているという。どんなものも調べてみれば意外な事実が出てくるものである。
※アンケートより
「肉の歌」(神戸市西区)、「お肉のうた」(明石市)
第9位 マルナカの歌(3票)
マルナカは瀬戸内海沿岸の町に広くみられるスーパーである。特に淡路島ではその存在感が強いと聞く。こうした地元民との密な関係が、マルナカの歌を同着の多かった10位グループから頭一つに抜けて9位にランクインさせた原動力かもしれない。
※アンケートより
「マルナカ(丸い愛をショッピング マルナカ マルナカ 仲間っかな)」(淡路市)、「マルナカの歌」(神戸市東灘区)、「マルナカで流れている曲。」(西宮市)
第6位 イズミヤの歌(4票)
阪神間に多くの店舗を持つスーパーイズミヤ。そのテーマソングがどれだけ住民に浸透しているかは、アンケート回答にみんな歌詞を書いてきたことからもうかがえる。もし将来、大阪が何かの間違いで独立国家になったら、国歌にはぜひイズミヤのテーマを推したい。このファンファーレをバックにオリンピックに入場する大阪の選手団を見てみたい。
※アンケートより
「イズミヤの歌("すぐそこにイズミヤ")」(神戸市長田区)、「イーズミヤーはー、みんなの事を待ってるー、」(明石市)、「いーずみやーはー皆の笑顔を待っている」(泉大津市)、「イズミヤの歌」(大阪市)
同着 第6位 マックスバリューの歌(4票)
マックスバリューは全国あちこちにあるスーパーだが、キャンペーンやポイントなどはイオンと共通したところが多い。そのため「イオングループの中でも売り場が小さく、食品売り場だけの店舗がマックスバリューなのだろう」と思っている人も多いが、ちょっと違う。マックスバリューはもともと独立したスーパーのチェーンで、それが後にまるごとイオンに買収されたのである。
買収後イオンは、マックスバリューの名前を残す条件として、最後の「伸ばす棒」を奪った。ある時から「マックスバリュー」の名前が「マックスバリュ」に変わったが、そこにはそんな事情があったのである。
奪われた「ー」は、イオン本社の地下に冷凍保存されているとか、イオンの偉い人が屋敷の番犬たちにエサとして与えてしまったとか、その時の犬の鳴き声が WAON!だったとか、根も葉もないウワサがいろいろある。
※アンケートより
「マクバの歌」(西宮市)、「マックスバリューの歌」(加古川市)、「ウフフな生活マックスバリュ」(尼崎市)、「ふふふの生活 マックスバリュ(歌詞が違うかも)」(姫路市)
第5位 呼び込み君(5票)
「ぽーぽーぽぽぽぽ」の能天気なフレーズの繰り返しが、かつては耳につくと不評だったが、耳につく耳につくとSNSで話題にされるうちに逆に人気が上昇。音の出所である小さなロボットの名前が「呼び込み君」であることも知られるようになった。いまやYouTubeには、ファンによる「呼び込み君」のカバーバージョン、リミックスバージョンが無数にあふれている。販促用の道具として使い捨てられるはずの店内ソングが、ネット上でネタを重ねられるうちに、社会に共有された文化になってしまったのである。
ガチ勢の中には呼び込み君(28,900円)を個人で購入、自宅に設置する猛者もいる。こうしたファンの声に答え、よりお求めやすい「呼び込み君ミニ」が12月に発売されることになった。すでに予約殺到だという。
※アンケートより
「ドン・キホーテで流れているテーマソングではない食品売り場の曲」(姫路市)、「呼び込みくん」(明石市)、「歌は流れていなかった。呼び込み君くらいです」(静岡県御前崎市)、「呼び込み君」(神戸市須磨区)、「呼び込み君」(神戸市)
第4位 ダイエー 木曜もっくんの歌(7票)
「木曜の市」というのが、具体的に何がどう安くなる日なのか、知っている者は少ないが、この曲だけはみんな知っている。木曜日にしか流れていないはずなのに、こんなに耳に残るのはなぜなのだろう? 冒頭で述べた「ヒット曲」とは、まさにこういう曲のことを言うのではないか。
※アンケートより
「木曜もっくんの歌」(神戸市西区)、「ダイエーの木曜モッくん」(神戸市長田区)、「ダイエーの木曜もっくんの歌」(西宮市)、「ダイエーの歌」(尼崎市)、「ダイエーの木曜の市、木曜モッくん」(宝塚市)、「ダイエーのモクモクモックン」(大阪市)、「ダイエーの木曜もっくんの歌」(大阪市)
同着 第4位 コープ ポイント5倍の歌(7票)
「ポイント5倍」と書かれたアンケート回答を見て、大阪北部の住民である私はスギ薬局のキャンペーンソングかと思ったのだが、すぐに神戸市民に否定された。「ポイント5倍といえばコープさんしかありえん」と。
コープは基本的には全国にあるスーパーだが、そのはじまりは神戸である。社名も「コープこうべ」というのが正式名称である。いや、神戸市民にとっては「コープさん」と、さん付けで呼ぶのが正式名称であろう。なぜさん付けなのかは不明だが。
※アンケートより
「コープのポイント5倍」(神戸市西区)、「五倍 五倍 ポイント五倍♪ お得な今日のお買い物 ポイント五倍♪ という歌詞の曲(曲名は知らない)」(神戸市北区)、「特定の曜日がポイント5倍であることを伝えている歌」(神戸市北区)、「5倍、5倍、ポイント5倍 どこの店だったか忘れました」(神戸市)、「5倍 5倍 ポイント5倍お得な今日のお買い物 ポイント5倍 という地元で1つしかないコープの曲」(西宮市)、「ポイント5倍」(西宮市)、「ポイント5倍の日にコープに行くと流れる歌。「5倍、5倍、ポイント5倍…」」(西宮市)
第3位 コープの歌(10票)
第4位に続き、コープの曲が連続でランクイン。回答者に神戸市民が多いせいか、コープが無双状態である。
この曲は「紙ふうせん」という男女のフォークデュオが1981年に作ったものである。非売品なので記録には残らないが、知っている人、歌える人の数でいえば、メガヒットに相当するものだろう。
※アンケートより
「コープの曲(題名わからない)」(神戸市須磨区)、「風のように」(神戸市西区)、「コープで流れている「風のように」」(神戸市長田区)、「コープの店内で流れている曲」(神戸市灘区)、「コープで流れている歌」(神戸市兵庫区)、「コープ共済」(神戸市北区)、「コープの歌」(神戸市西区)、「コープの歌」(西宮市)、「コープ共済」(宝塚市)、「コープさんの歌」(豊中市)
第2位 特になし(20票)
回答が空欄の人は無効票としたが、「特にない」「覚えていない」とわざわざ書いてくれた人は、本当に耳に残る曲はないのだということでデータとして集計することにした。そういう人が20人で、第2位であった。
耳について離れない曲がないというのはうらやましい気もするが、これはアンケートの質問文が悪かったのかもしれない。「街のスーパーなどで」ではなく、「スーパーやドラッグストア、量販店、商店街、駅前や学校などで」と具体的なイメージを広げられるような書き方をすれば、耳に残る歌や音楽は、もっとたくさんの人から引き出せたかもしれない。
※アンケートより
「特にない」(神戸市兵庫区、神戸市垂水区、西宮市、伊丹市、加西市、西脇市、明石市、姫路市、宝塚市、尼崎市、大阪市、山梨県甲州市)、「覚えていない」(神戸市兵庫区、たつの市、加古川市、山口県光市、福岡県福岡市)
第1位 おさかな天国(25票)
耳に残る曲ランキング、堂々の第1位は「おさかな天国」であった。
Wikipediaによれば、1991年に水産庁の魚食普及事業の一環として作られ、全国1万店のスーパーにカセットテープが無償配布されたことが始まりだという。「スーパーの鮮魚コーナーの曲がやたらと耳に着く」ということで徐々に話題になり始めたのが1998年ごろ。2002年には世間の注目はピークに達し、歌を歌う柴矢裕美さんは「ミュージックステーション」や「HEY! HEY! HEY! MUSIC CHAMP」などの歌番組に連日出演した。その年の大みそかには「紅白歌合戦」への出場も果たした。
スーパーも「これ人気の曲らしいで」ということで「おさかな天国」のボリュームをさらにあげる。そんな地獄のような店内を、ベビーカーに乗せられて強制徘徊させられていたのがわれわれ世代である。脳細胞がグングン発達する人格形成の一番大切な時期に、子守歌でも童謡でもなく「おさかな天国」を大音量で刷り込まれたわれわれにとって、このランキングは当然の結果であったといえるだろう。
※アンケートより
「さかなさかなさかな~」(神戸市垂水区)、「さかなさかなさかな?さかなを食べると?頭頭頭?頭が良くなる?」(神戸市垂水区)、「魚を食べると頭が良くなる歌」(神戸市西区)、「魚の歌」(神戸市西区)、「さかなさかなさかな?」(神戸市長田区)、「お魚天国」(神戸市兵庫区)、「魚魚魚?さかなーをーたべーるとー♪ の歌」(神戸市)、「おさかな天国」(西宮市)、「魚の歌(そのスーパーは無くなったが…)」(伊丹市)、「おさかな天国」(加古川市)、「さかな さかな さかな?」(加古川市)、「魚を食べると頭が良くなる歌」(加古川市)、「サカナコーナーで流れている”お魚天国”という曲です。」(姫路市)、「魚の歌」(姫路市)、「魚魚魚?の歌」(姫路市)、「魚魚魚魚ーをたべーよーうーって曲です」(姫路市)、「「サカナ、サカナ、サカナ、サカナを食べると?」という歌詞の歌」(明石市)、「魚売り場の歌」(明石市)、「魚魚魚…魚を食べると頭頭頭…頭が良くなる…♪」(宮崎市)、「おさかな天国」(吹田市)、「さかなさかなの歌」(吹田市)、「おさかな天国」(大阪市)、「おさかな天国」(大阪市)、「おさかな天国」(大阪市)、「お魚コーナーでかかっていたが覚えていない」(和歌山県すさみ町)
●ランク外の曲もまた楽しい
1票しか入らなかった曲もたくさんある。同着10位が7曲あったので順位で言うと17位。完全にランク外なのだが、普通のランキングと違って1票しか入らなかった曲にも、どんな人がどんな曲を入れたのかと、逆に興味がかきたてられてしまう。
マルヨシセンター(1票)
「マルヨシセンター」(香川県高松市)
香川県から淡路島南部にかけて分布するスーパーである。YouTubeにオリジナルの曲はなく、代わりにファン?によるアカペラソングだけが見つかった。地元民からの強すぎる愛を感じる。
ディオ(1票)
「ディオの曲」(岡山市)
岡山県を中心に分布するスーパーである。YouTubeでは、経営母体の大黒天物産が開いたパーティ―で、歌手が生歌を披露する動画が見つかった。この県民たちの盛り上がりを見よ! 日本にはまだまだわれわれの知らない地域文化が存在するのだ。
ザ・ビッグ(1票)
「BIG(イオン系列の価格特価店)」(長野県安曇野市)
イオン傘下のスーパーらしい。そしてめちゃくちゃ安いらしい。それ以上の情報はわからなかった。
ラ・ムー(1票)
「ラ・ムーの歌](神戸市兵庫区)
安いといえばラ・ムーである。全国各地にあるが、その割にメジャー感がない。
たとえばこのテーマソング。普通は安心安全とか暮らしの応援とか、そんなことを歌うものだが、ラ・ムーの歌はなんというか、アイドルを育成するゲームの主題歌のようである。これは耳に残るわ。
ライフ(1票)
「ライフの歌」(大阪市)
ライフは東京都と大阪府を中心に出店しているスーパーである。ラ・ムーより店舗数は少ないはずだが、なぜかラ・ムーよりはるかにメジャー感がある。店内ソングも普通に今風である。何ひとつ減点要素はないのだが、ここまでの記事の流れからすると、減点要素がないことが逆に減点要素である。
ドラッグストア ザグザグ(1票)
「スーパーでは無いのですが、ドラッグストアzagzagの「ちょっと気になるザグザグ」のワンフレーズは控えめで可愛らしく印象的です。」(神戸市、元香川県高松市)
ザグザグは岡山、広島、香川を中心に店舗を広げるドラッグストアである。この人の言っている「ちょっと気になるザグザグ」は店内ソングではなく、この地域だけで流されているローカルCMのフレーズである。はじめてみたが、このCM面白いwww。
ゴダイ(1票)
「ゴダイ」(たつの市)
ゴダイは兵庫県を中心に店舗を広げるドラッグストアである。「ゴーダイ、ゴダイゴーダイ、あなたの町の、ゴダイですー」というフレーズはいかにも店内ソングという感じ。奇をてらうな、基本に立ち返れというメッセージのようで、背筋がシャキっとする。
なかやま牧場(1票)
「お肉はやっぱりナカヤマ、ナカヤマ、美味しいお肉だモ〜ウ。焼肉、ステーキなんでもOK!やっぱりお肉は、美味しいお肉はナカヤマ牧場。(広島県福山市)
「なかやま牧場」は広島県の畜産業者。アンケートの回答者が歌詞を完コピしているところからみて、広島県のスーパーの精肉コーナーでは、この曲が相当なヘビロテでかかっているものと推測される。それにしても牛が牛肉を食べるCMは、倫理的にどうなのか。
野菜バリバリ元気っ子(1票)
「野菜バリバリ元気っ子」(茨木市)
豆腐の歌(1票)
「豆腐の歌」(宝塚市)
コロッケの歌(1票)
「コロッケの歌」(姫路市)
店舗不明シリーズ
「炎」(明石市)
「ようこそジャパリパーク」(加古川市)
「炎」というのはLiSAの歌った『劇場版 鬼滅の刃』の主題歌のことだと思う。「ようこそジャパリパーク」はアニメ『けものフレンズ』の主題歌である。そこまではわかるのだが、それがどこのスーパーの店内で耳に残る程流されていたのかは分からなかった。
「小田和正「クリスマスツリーに〜♪」」(宇治市)
「ユーキャンシーザレインボー」(神戸市)
この2件は、店舗以前に曲が特定できなかった。申し訳ない。
「てててててててててててててーててーテレレテレテテテレテテテテテテーテーテーって曲」(大阪府柏原市 )
わかるかwwwwwwwwww
あいみょん「マリーゴールド」
「マリーゴールド」(住所未記入)
「マリーゴールド」としか書いていなかったため、これも店舗不明に分類しようとしていたところ、神戸市民より「ぎょーすーではないか」との指摘が。
「ぎょーすー」とは「業務スーパー」のことである。神戸発祥で大阪に店舗を広げている激安スーパーである。店独自のテーマソングはないが、何か特定の曲を憑りつかれたように流しまくることがあり、2018年にはあいみょんの「マリーゴールド」が繰り返しかかっていたそうだ。マリーゴールドを聞くと、ぎょーすーのブラジル産鶏もも肉2kg724円を買いに行きたくなる者も多いという。
その前、2016年にはRADWIMPS の「なんでもないや」が繰り返し流れており、映画『君の名は。』を見た後、気が付いたらぎょーすーの牛乳パックプリン1kg218円を買って帰っていた者は多いと聞く。

●おわりに
こんな回答を書いてくれた人がいた。
「自身が3歳から6歳の頃に効いていた歌。メロディは覚えているが、歌詞や曲名を忘れてしまったため、調べても中々見つからない。」(大阪市、元は岡山県瀬戸内市)
店内ソングは普通の曲と違い、タイトルも歌手もわからない。その店がある土地を離れてしまったら、後で聴く機会もまずない。だけれどもそれは、自分が過ごしてきた町や人の記憶とひとつになって、耳にしつこく――いや、心に深く残るものでもあるのだ。だから、この回答を書いてくれた人のように、メロディはよく覚えているけど曲が見つからない、そんなもどかしいことも起こるのだ。
この人がいつか何かのきっかけで、懐かしい店内ソングにもう一度会うことができたらいいなと、心から思う。
指導教員のコメント
ランキング5位に出てくる「呼び込み君ミニ」は、私もさっそく予約しました。
Amazonで予約していたのですが、それを忘れてヨドバシでも予約してしまい、ある日2匹届いてビックリ。繰り返しメロディーを聞くうちに、日常のイライラも消えていきます。違うイライラで塗りつぶされて。
あなたが住んでいる(あるいは住んでいた)街のスーパーなどでいつも流れていた、印象に残る曲を教えてください。(記述式、複数回答可)