いま僕たちは、真のアーティストのかき鳴らす時代の音に、魂をかきむしられる幸福を享受しようとしている。そう、90年代を代表するアーティスト、ナメキケイが、そのソロアルバム「極限4.5」を、ついにリリースしたのである。
ファンのみんなには説明するまでもないが、97年の春にリリースされた「極限4」は、ピンクフロイドの「狂気」とチャートの100位を激しく争う大ヒットを記録した。極限ファンなら擦り切れるまでプレーヤーの上に置いたことだろう。
しかし「極限4」には、現在大阪でさびしくひとり暮らししているアーティスト、ナメキケイがあまり参加できていない。さらにアーティストは、来年1月から数年間、某国の山奥へ人類学の調査に行ってしまうという。もうナメキ色の音を聴くことはできないのだろうか……。
そんな僕らの悲痛な叫びに答えてくれたのが、このソロアルバムなのだ!
壁の薄い大阪のアパートで、隣人のヤンキー夫婦と戦いながら録音されたこれらの楽曲は、僕らへのゴキゲンな置き土産であると同時に、「4.5」という中途半端なナンバリングからは「帰国するまでに『極限5』、頼むぜ」という強いメッセージも伝わってくるだろう。
ありがとう、ナメキさん、そしてお元気で、ナメキさん!

高尾山で最近浮浪者が野性化
狩猟採集しながら独自の文化築く
浮浪者達はどこから来たのか
そしてどこへ行くのだろう あーあー
摩周湖のほとりに流れついていた
ザリガニの甲羅 しかし大きさは2m
巨大ザリガニのさまよえる湖よ
その水面に何を映すのか あーあー
信じられないが本当のことなんだ
確かな情報を入手したのだ
信じてるだけでは 解けない謎だから
だから出した計画書なのだ Yeh!
そして僕らはいま旅立つ(自然の仕掛けたワナの中へ)
そして世界は変わっていく(謎の扉を開くたびに)
マーボのこぼれた銀マに 凍えた身体を横たえて
明日の謎を夢見てる
去年から御嶽の上流のダムの上で
突然吹き出す水 目撃されている
御嶽で今何が起きようとしているのか
それは人類への警告か あーあー
長野県小諸の麦粒のような地層
掘り出せば食べられる それは謎の生き物
暗黒世界に息づき続ける
この地球の真の支配者よ あーあー
君のためだけに立てた企画なんだ
君の心の叫びが届いた
僕一人だけでは解けない謎だから
だから書いた君の名前ここに Yeh!
そして僕らはいま旅立つ(自然の仕掛けたワナの中へ)
そして世界は変わっていく(謎の扉を開くたびに)
上級生への憎しみ ボートの重みで抑えこみ
はるかな謎へ歩いてく
まぶしい朝の陽が 目玉焼きのフライパンに
あふれて しまいそう
魚にエサあげて ネクタイきゅうと締めたその時に思った
御嶽のテン場で マーボなすが食べたい
別においしかないんだけど
街角 カフェテラス ニューズペーパー読みながら
彼女を待ってた
彼女が手を振って 駆けよりかけたその時に思った
小袖のテン場でラジウスを焚きたい
別に意味はないんだけど
もう一度でいいから合宿に行きたい
それはかなわぬ願いなのか
お酒っていうのはさ、意外に簡単につくれるんだよね。
酵母菌を使って、糖分を二酸化炭素とアルコールに分解させる。要するに甘いジュースに、スーパーとか売っているドライイーストを入れるだけ。
Only It !
それだけでお酒になるんだよ。
できあがりはスパークリングワインみたいな感じかな。でも、よりおいしく、確実に作るコツっていうのもあってね…… え? 知りたい?
じゃあね、まず1.5リットルのジュースを買ってきて。種類は何でもいいよ。 それをまず200ccくらい飲んじゃおうか。理由は後でいう。
Say Later !
おっと、口飲みしちゃダメだ。雑菌が付くからね。
で、残ったジュースのうち、半分をなべに移してグツグツ煮立てよう。それで砂糖を思いっきり……そう、200グラムくらい入れちゃおうか。
Two hundred grams !
それをもう一回ペットボトルに戻す。さっき少しジュースを飲んでおいたのは、砂糖を入れた分、量が増えるからだ。
戻すときはじょうごをつかってていねいに注ごう。熱いジュースがペットボトルに直接かかると瓶が融けて泣きをみるぞ。
Look at crying !
瓶を握ってみて、だいたいお風呂くらいの温度になっているか確かめよう。
Check it out !
さあ、ここでドライイーストを小さじ三杯くらい入れよう。
酵母菌にとって、暖かくて砂糖たっぷりのこのジュースは夢のような環境だ。こうして、雑菌が繁殖する余地を与えずに、一気に酵母菌だけを繁殖させるのだ。
Bleed it !
最初に暖める、砂糖をたくさん入れる、それがお酒を確実につくるコツだ。
3時間ぐらいして、二酸化炭素の細かい泡がぶーっと出てきたら成功の証拠だ。そのまま部屋の隅においておこう。大丈夫、腐ったりしないから冷蔵庫には入れないこと。また、かなり二酸化炭素が出るので、ふたはゆるめておこう。
一週間ぐらいでのめるお酒になっているぞ。
Drink it !
また、さらに一ヶ月くらい置いておくと、糖分がすべて分解されて、甘くない、よりキレのあるお酒になるぞ。
Drink it !
もっともアーティストの提供する情報は、確実すぎて探検にならないかもしれない。簡単な計算をしてみよう。
中国の野人が(いるかいないか分からないので仮に)いない確率を半々の1/2とする。同様にオーストラリアで撮影された30mのうなぎや、奥多摩で捕まった50cmのみみず、牛久沼で探検部を襲った謎の生物も1/2とする。すると、こういう生き物がどれも実在しない確率は1/2×1/2×1/2×1/2で1/16である。ということは、これらの生物のうちのいずれか一つが実在する確率は15/16、つまり93.75%に達するのだ。
アーティストは、彼の通う国立民族学博物館のマザーコンピューターでもたしかめ算をしたらしいが、やはり同じ数字がはじき出されたという。