ポートタワーの限界を探しに行く

2年生 Y.N

(google 画像検索より)

 神戸の街のランドマークといえばポートタワーである。

 ポートタワーは1958年、今から60年近く前に、神戸港を一望できる展望用タワーとして埠頭のキワに建設された。高さは108m。和楽器の鼓のような双曲面構造の美しい外観と独特のパイプ構造を持ち、その優美さから「鉄塔の美女」とも呼ばれている(神戸公式観光サイト Feel KOBE より)。

 この美しい赤いタワーの姿を胸に刻んで、今日もわれわれは神戸の街に生きるのであるが、さて実際のところ、ポートタワーを肉眼で拝むことのできる範囲というのはどれくらいなのだろうか? ポートタワーが見える一番遠い場所、つまりポートタワーの限界というのはどこにあるのだろうか?

 このような神戸の民にとって最重要ともいえる情報が、ネット上には存在していない。誰も調べたことがないらしい。ならば自分で調べるしかあるまい。

 僕はバイクにまたがり、炎天下の神戸へと出発したのだった。

●調査方法

1.ポートタワーが見えた場所(カメラでとらえることができた地点)から、ポートタワーまでの直線距離を測る。

2.施設などの無断立ち入りなどはしない。

3.天候などに左右されるため、調査は2回以上行う。


●調査ルート

 調査は、ポートタワーから東に向かって遠ざかりながら、どこまでタワーが見えるかでおこなうことにした。西に向うと須磨のあたりで六甲山地にぶつかり、そこで視界がふさがれて調査が終わってしまうことが目に見えているからである。

(google map より)

 もちろん東に向かって進んだとしても、ポートタワー付近に林立する高層ビルで視界はふさがれてしまうだろう。しかしビルの隙間を縫うようなうまい角度を見つけることができれば、10kmくらいは行けるのではないか。

 具体的に言うと地図で赤い円で囲んだ辺り、神戸市東灘区から芦屋市、西宮市あたりが、ポートタワーが見えるか見えないかの境目になるだろうというのが自身の予想だ。この予想をもとに調査ルートを設定した。


●第1回調査(8/25・くもり)

1. ポートアイランド 「BE KOBEモニュメント」

 スタート地点ということもあり、確実に見える場所で調査。ポートアイランド北西部「ポーアイしおさい公園」内の「BE KOBEモニュメント」に足を運んだ。周辺には、神戸学院大学や兵庫医療大学など教育施設が多い場所だ。

・結果 →はっきりと見えた。

・現在の距離:2,288m


2. 神戸空港地区

 ポートアイランドをさらに南下し、神戸空港に向かった。

 神戸空港地区西部の「ラヴィマーナ神戸」付近のロータリーからポートタワーを見ようとしたが、沿岸部に高い堤防が設置されていたため、見ることができなかった。

 引き返して、神戸空港の駐車場付近で調査を再開。しかしそこでも堤防や雑草、樹木などによって視界は遮られた。

・結果 →見えなかった。

 ちなみに、神戸空港からポートアイランドに戻る橋の上からはポートタワーを見ることができたが、橋の途中で停車するのは危険であるため、ここではカウントしないことにする。


3. 六甲アイランド北西部

 さらに東に移動し、六甲アイランドに上陸。六甲アイランド北西部に位置する「藤原運輸(株)六甲オートターミナル」付近で調査。

 ターミナルは沿岸部に位置するが、堤防がなかったため見通しが良かった。期待が高まる。ターミナル内は関係者以外立入禁止のため、施設内からの調査はせず、フェンス越しに調査をおこなった。

・結果 →簡単に発見できた。思っていたよりも近く感じた。

・現在の距離:6,224m


4. 六甲山天覧台

 六甲アイランドから芦屋浜へ向かったが、神戸市街は全く見えなかった。これ以上平地を走っていても仕方ないと判断し、ルートを北に取って六甲山を登った。

 頂上まで登ったものの、ポートタワー方面への視界は良くない。視界が開けた場所はないか、Google mapであれこれ地形を確認したところ、山頂から尾根伝いに西へ下ったところにある六甲ケーブル山上駅横の展望台、「六甲山天覧台」からなら見えそうである。望みをかけて行ってみる。

・結果 →見えた! ……気がしたが、写真ではうまく証拠を押さえられなかった。
 夜、ポートタワーがライトアップされた状態なら、もっとはっきり見えそうな気がした。後日、再調査する。

・現在の距離:8,988m?(再調査の必要あり)


●第2回目調査(9/1・晴れ時々曇り)

1. 深江浜町

 前回の調査の経験から、距離を稼ぐなら障害物のない海上越しにポートタワーが見える場所が有利だと予測をたて、第2回目の調査は海沿いを中心に調査した。

 最初に行ったのは神戸市東灘区の人工島、深江浜町である。地図を見ればわかる通り、深江浜の突端からは、六甲アイランドやポートアイランドの間を抜けて、ほぼ海上越しにポートタワーまで視線が届く。もしポートタワーを見ることができればだいぶ距離が稼げるはずである。

 しかし実際に深江浜に行ってみると、大きな工場や倉庫、積み上げられたコンテナなどによって視界がさえぎられてしまう。自由に動ければ見えやすい場所もありそうだが、多くの場所は工場の敷地になっており、立ち入ることができなかった。

 周辺をあちこち回ったが、ポートタワーが見えそうな場所は見つからなかった。西宮浜などもそうだが、このあたりの海沿いにある「〇〇浜」という名前の埋め立て地は、どこも大きな工場や海上輸送の拠点となっており、同じような状況である。地図上で考えた作戦は、こうして破綻したのであった。

・結果 →考えが甘かった。


2. 深江浜町と涼風町の間の橋

 東灘区の深江浜町と芦屋市の涼風町の間には、阪神高速5号湾岸線および県道722号の橋がかかっている。(先ほどの地図で「橋」と書いたところ)。

 下を大型船がくぐりぬける必要があるためか、この橋はかなり高い位置にかかっている。ここなら工場や倉庫にじゃまされず、ポートタワーが見えるのではないかと考え、停車した。

 手前の紫の線が入っている建物は深江浜町のキユーソー流通システムの建物、その奥の煙突が立っている白い建物が隣の人工島、魚崎浜町にある東クリーンセンターである。角度的にはこの二つの建物の隙間の彼方にポートタワーが見えるはずなのだが……。

結果 →曇っていたため、見えたか判断できなかった。

 しかしポートタワーの近くにあるホテルオークラは見えた気がした。見る角度が悪かったのかもしれない。この場所も後日再調査したいと思う。

 もしここからポートタワーが見えれば、前回の最長記録であった六甲山天覧台の9kmを上回る11kmになるはずである。


●第3回目調査(9/15・晴れ)

1. 深江浜町と涼風町の間の橋(再調査)

 後日、見えやすい時間帯であろう日没の時間帯を狙って調査した。この日は比較的晴れていたので、前回よりも調査しやすかった。

 線の入ったキユーソー流通システムの建物、煙突のある東クリーンセンター、どちらもはっきりと視認できる。そしてその隙間、赤い丸をつけたあたりがポートタワーのある方向である。

 拡大してみると、オリエンタルホテルの特徴的な船型の建物はわかる。しかしその隣に見えるはずのポートタワーは……

・結果 →見えなかった。

 魚崎浜町の隣にある人工島、住吉浜町の"KAMIGUMI"と書いてある建物で、ちょうどポートタワーが隠れてしまう。もし隠れなければ11km越えの大記録が出ていたのに、残念である。

 ポートタワーは見えなかったが、きれいな夕日が撮れたので良しとする。


2. 六甲山天覧台(再調査)

 1回目の調査で訪れた六甲山天覧台でも再調査。六甲山を登るのに思いのほか時間がかかったため、到着する頃には辺りは真っ暗だった。しかしポートタワーもライトアップしているので、見えやすくなっているはず。

 これは……見えているのではないだろうか。写真を拡大してみる。

結果 →はっきりと見えた。

iPhoneではぶれるので、Nikonのカメラで撮影した。カメラの性能もいいのでいい夜景もとることができた。

・現在の距離:8,988m(確定!)


●調査の総括

・ポートタワーが見える一番遠い場所……六甲山天覧台(8,988m)

・参考記録……もし建物で隠れていなければ深江浜町と涼風町の間の橋。およそ11km。


・調査に費やした移動時間……23時間

・移動距離……423km

・高低差……930m


 猛暑の中、125㏄のバイクで神戸を走り回った3回の調査はこうして終わった。バイクも酷使されたが、乗っている人間の方も熱中症になりかけてしまった。無事に終わって何よりだが、同じような調査はしばらくはやりたくない。

 ポートタワーを見るなら、やはり近くで見るのが一番である。調査を終えた今、心の底からそう思う。


指導教員のコメント

おつかれさま!

君が命を削るようにして突き止めた「ポートタワーが見える限界=8,988m」というデータは、まあ世の中的には何の役にも立たないのですが、このゼミ的には最高評価です。

成績は「秀」でも「優」でも「良」でもなく、「す」って付けておきますね。「すばらしい」の「す」です。GPAなんかには換算できないプライスレスな成績です。